「エネルギーシナリオ市民評価パネル(エネパネ)」という団体があります。
現存の化石燃料や原子力などのエネルギーから再生可能エネルギーへのシフトについて、
発表されるシナリオや論文、情報を集め、分析・評価を行う団体なのですが、
そこが「エネルギー・環境のシナリオの論点」という報告書を発表しました。
イントロダクションには、
「政府のエネルギー・地球温暖化政策の複数の選択肢が、国民に示されようとしています。
今回の報告書では、2012年夏に決定予定のエネルギーと地球温暖化対策のあり方を考える上で、
重要な論点について検討し、注意してみるべき経済や産業のあり方、社会の選択肢とその意味を示しています。
さらに、各NGO提案のシナリオに共通するビジョンとその実現可能性を検討しています。」
とあります。
今、国の指針として、再生可能エネルギーの固定買い取り制の枠組がきまりつつあります。
そして電力の今後の活用の方向性として具体的ないくつかの選択肢が提示され、
8月にはこの中からどれを国として選ぶか決まるようです。
ここに向けて、いよいよ世論も「国民的議論」に動くと言われていますが、
具体的な方法はまだ誰にもみえていません。
そんな現状を踏まえ、私達にできることは、情報を常に集め、国や世論の動きをよく見ていることです。
そして、何もわからないうちに国や産業界が方向性を決めてしまう前に、国民的議論が実現するように、自分ができることを少しでも行うことです。
そのためのひとつの情報として、今回はこの報告書の内容をかいつまんで紹介しようと思います。
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・日本の政策議論では、今もなお経済成長とともにエネルギーが増えると認識されている。
2030年の産業の生産量や貨物輸送量、家庭や業務の活動量を右肩上がりで過大に評価した上で、「省エネは難しい」と議論していることは問題である。
今後は資源・環境制約を前提に、エネルギー・CO2を減らすことで環境負荷を減らしながら、
経済を発展させ雇用を増やすビジョンを描くことが必須である。
・原発地域の経済に関しては、地域住民に帰属するメリットには他地域との特段の差が見られない。
福井県の場合、原発を停止する代わりに県内での他の分野の生産比率を向上させれば、
同じだけの雇用効果が得られる。また原発運転存続より、廃炉事業の方が県内の経済効果が期待できる。
・再生可能エネルギーについて、国内の導入ポテンシャルは非常に大きい。
指摘されるさまざまな課題は、将来に向けて解決が可能である。
割高な発電コストは、むしろ、化石燃料依存・原発依存のコストに予測される大幅な上昇に比べ、近い将来は安くなる。
電力システムの課題は、広域での系統運用を実現し、出力調整、需要側のマネジメントシステムを組み合わせれば、
蓄電池などコストがかかる方法に頼らず解決が可能である。
雇用効果は大規模集約型発電システムの場合よりも大きいとされる。
・脱原発社会は、気候変動問題を犠牲にすることでも、経済を犠牲にすることでもない。
明確な方針の下、脱原発とともに、省エネ目標、再生可能エネルギー導入目標、温室効果ガス排出削減目標を、
本報告書の市民団体のシナリオに基づき野心的に設定することが必要だ。
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これは要約のさらに要約なので、本文が読みたい方は是非、下記リンクをひらいてみてください。
この報告書をまとめているエネパネは、
・環境エネルギー政策研究所
・気候ネットワーク
・WWFジャパン
・FoE Japan
・グリーンピース・ジャパン
・環境自治体会議環境政策研究所
・原子力資料情報室
・原水爆禁止日本国民会議
・CASA
などの団体が参加しています。
これらの団体名の通り、あくまで脱原発、再生可能エネルギー推奨の観点から書かれたものであることを考慮にいれて読む必要があります。
もちろん世の中には、エネルギー問題に関して様々な視点からの議論があります。
できるだけ色々な方向からの情報を集めながら、来るべき「国民的議論」に向けて、
自分の立ち位置を整理し、最善の選択ができるよう、準備をはじめましょう。
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