本日は、東京大学農学部の公開セミナー「未来を創る農学、未来を支える農学」に行ってきました。
農学国際専攻の川島准教授の話だったのですが、とても興味深かったです。
食料自給率は低いほうが日本の農業が強くなる!という衝撃的な内容の「食料自給率の罠」の著者なので、ご存知の方もいらっしゃるかもしれません。
今話題の”グローバルヒストリー”という分野がご専門で、農学という切り口から16世紀以降の歴史を紐解こうという研究をされている方です。
まだ日本では数人しかこの分野に手を付けている研究者はおらず、最先端の学問とも言えます。
川島准教授はこの講演を以下のように総括していました。是非読んでみてください。
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1. アジアは大量の「工業化予備軍」である。
2. 農学により、農民人口が減っても農産物は減らないようになった。
(品種改良、農薬や化学肥料の使用、機械化などによって)
3. 農民出身者が、安い賃金で工業製品を作る。
→アジアで安い工業製品を作れるので、デフレが止まらない構造に
4. デフレを止めようとして金融緩和しても、農民出身の低賃金労働者のせいで商品価格は上がらない。
5. いわゆる「金あまり」の状態となって、お金が土地・石油・銅・希少金属に向かうバブル多発時代に。
これが今までの先進国の歴史が示す事実である。
世界人口70億のうち35億人は、米作農民が主体のアジアにる。
(米作には水管理を共同で行うことが必要で、田植えや雑草取りで手間がかかる。
米作によって培われた、共同作業に向いていて忍耐強いアジア人の基質は、工場作業にとても向いている)
なので、まだまだバブルが起こりうる余地が残されている。
世界の人口が増え続けることによって食糧危機が起こると心配されているが、
世界人口は90億人をピークに減少に転ずるので心配ない。
なぜなら農業社会は肉体労働であるので土地が男系相続され、女性は弱い立場にあるが、
工業化社会では、女性も稼げるようになるため地位が向上し、
婚姻率の低下および晩婚化(=少子化)を引き起こすため。
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アジアの農業をよく見ていれば、世界経済を占える、というのがこの准教授の持論でした。
なかなか面白い視点です。
そう言われてみれば、お隣りの中国でも同じようなことが起こっているようにも見えます。
日本経済は長い間デフレから抜けだせませんが、アジア諸国の振興が続く間はこの状態が続くと
覚悟を決めたほうがいいかもしれません。
エッセンスだけをまとめたので現実味がなく感じられる方もいるかもしれませんが、
実際の講義では様々なデータが示され、説得力がありましたよ。
興味のある方は、氏のセンセーショナルなご著書を読んでみるといいかも?
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