「バイオマス燃料の事業化に向けた国際戦略シンポジウム」という講演を聞いて来ました。
アグリキュレーターとしての仕事のテーマに「食とエネルギーの自給」というものがあり、
再生可能エネルギー分野で熱い注目を浴び続けているバイオマス燃料について、最新の知識を増やしたかったからです。
バイオマス燃料とは、生物資源を原料として作られた燃料のことで、
バイオディーゼル、バイオエタノールなどの名前は皆さんご存知だと思います。
最初の基調講演で聞けたのは、バイオマス燃料の原料が一般的に知られたトウモロコシや大豆などの第一世代から、
現在第ニ世代の木材などセルロース系原料、第三世代である藻類へと研究対象が移ってきているという話でした。
トウモロコシや大豆の時に問題となった「食料と競合するため、将来の食糧危機を助長する」という点を克服する原料です。
しかし、どの世代の原料も、ある点で人間と競合して奪い合いになるものを含んでいるというのです。
それは、「水」です。
先日「国際水映画祭」の話でも紹介しましたが、水資源は食糧危機と同じく今後世界を揺るがす大問題になると見られていて、
これから50年以内に石油よりも水のほうが高くなるなんて話もあるくらいです。
世界中見渡せば、水資源に恵まれていない国は多々あり、水があっても公害や放射能汚染で
使えなくなってしまったら、ないも同然です。
増え続ける世界人口を食べさせていくために増産していくより他ない農作物を作るには、当然大量の水も必要で、
そこにバイオマス燃料の増産で水をさらに使うとなれば、水の奪い合いが生まれてくる未来は必至ともいえます。
日本のODAで資金を出し、海外の途上国と連携してバイオマス燃料の研究・開発を行う事例の発表もありました。
最近特に注目を浴びているバイオエタノールの話では、遺伝子組み換え種が大活躍しているとのこと。
その土地の在来種のDNAを組み込んだり、生態系の保全を謳ったりと色々努力しているようですが、遺伝子組み換え種の使用そのものについて
果たしてどこまで考えているのか、ちょっと分かりかねました。
ブラジルにはサトウキビから作るバイオエタノールの技術が大変優れている企業があるとの話もあったのですが、
この会社はモンサント社に買収されてしまいました、と特に危機感もなく報告していました。
モンサント社といえば、遺伝子組み換え種で知られているグローバルな巨大企業なのですが、
そういう点が問題になることはないのでしょうか?
この講演で、地域の資源をつかって熱や電気エネルギーを生むことができるバイオマス燃料への期待が大きいこと、
発展途上国にとってもバイオマス燃料は必須であるということは分かりました。
日本でも原発ゼロシナリオの基本として、今後さらに着目されるはずです。
しかしその動向を虎視眈々と狙っている多国籍企業の動きの一端もまた見えた気がします。
食品ではない植物の栽培が世界中で行われようとしていますが、穀物メジャーだけでなくオイルメジャーも投資を開始しており
大きなお金が動いています。
バイオマスエネルギーをめぐる複雑な利権やお金の動きが、果たして世界をどう変えるのか?
それはいいことばかりではなさそうです。
この動きによって、末端にある地域社会や貧困にあえぐ弱者が犠牲になることがあってはならないな、と思いました。
補足:9月12日日経新聞にて、食料とも競合せず干ばつの影響もうけない藻類由来のバイオエタノールが注目されていて、
膨大な燃料を必要とするANAやJALなどの航空会社の依頼によって、ミドリムシを使った国産燃料の開発が始まったという話が掲載されていました。
米国ではすでに本格培養実験が始まっていて、投資家にはビル・ゲイツ氏やモンサント社の名前も。
食とエネルギー双方に巨大資本と遺伝子組み換え技術が関与していることに、”独占”といういやな予感がします…
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