過去の記事で紹介したこともある「モンサントの不自然な食べもの」という映画。
9月から渋谷アップリンクで上映が始まっています。
これは、フランス人ジャーナリストのマリー=モニク・ロバンさんが監督したもので、
遺伝子組み換え種で名を馳せる、アメリカのグローバル企業モンサント社を追い続けたドキュメンタリーです。
多国籍企業による種の独占や遺伝子組み換え食物について警鐘を鳴らしているこの映画は、
農業界ならず、環境や食の安全に注目する人々から静かな支持を集め続けています。
この映画が四ツ谷で開催される「たねびと映画祭」でも上映されるとのこと。
こちらは今回が一回目となる映画祭で、上映作品も「モンサントの不自然な食べもの」のみですが、
やはり今農業界で注目されている「野口種苗研究所」の野口勲氏によるトークコーナーが面白そうです。
野口種苗研究所のことを紹介する前に、過去の記事で紹介した「F1」という種についての復習を。
現在の農業界で使われている種は、多国籍企業を含む大手企業が販売するF1(1代雑種)と呼ばれる種で、
これは1代目はスーパーや外食産業に卸すのに適した「つぶぞろいの」野菜が採れるものの、
二代目からはそうはならず、野菜からの種の採取もできないため、
農家が毎年企業から新たな種を買い続けなくてはならない。
と同時に、その土地に根ざした在来種が駆逐され、ひいてはその地域固有の食文化の変容も引き起こします。
野口種苗研究所ではそうした流れに逆らって、二代目の種がとれる在来種を守ることで、地域の食文化、農家の自立を促しているのです。
ここで一点覚えておかなくてはならないのは、「有機無農薬野菜であれば大丈夫」ということではないというところ。
有機無農薬野菜であってもほとんどの種はF1が使われているのです。
これも過去の記事である「ロハスとスローフードの違い」で指摘しましたが、
有機無農薬野菜が即、健康によい地域や農家の自立につながるわけではないのです。
つまり「これを買っておけばすべて大丈夫」というような、あらゆる意味でいい野菜はないのです。
F1種は農家と企業双方に大きなメリットのある種で、だからこそ現在ほとんどの農家がこれを使っているのですが、
結局はそれが、大企業、多国籍企業への農家の依存を引き起こします。
この依存によって、食文化のグローバル化=均一化が起こり、
地域に根ざした農業や、ひいては食文化も消失させてしまう。
何故大企業に依存してはならないのか。何故食文化を守ること、農を守ることに執心しなくてはならないのか。
そこに素朴な疑問を持つ読者の方々もいるでしょう。
そういう方々にこそ、この映画や野口さんの取り組みを知ることで、自立について考えるきっかけを持ってほしいのです。
最後にもうひとつ、種に関する映画を。
10月20日から渋谷のユーロスペースで「よみがえりのレシピ」という映画が上映されます。
これは、在来種を守って野菜づくりを行う山形での取り組みが、
その野菜を使って作った料理とともに紹介されるドキュメンタリーです。
こうした地域の自発的な取り組みを通して見えてくる、農業と食のありかた。
それは地域や環境を守ることにもつながっていくと思います。
農関係の良質なドキュメンタリーが上映される機会が増えているので、是非みなさんも観て、日々の食卓について思いを馳せてみてはどうでしょう?
– 「モンサントの不自然な食べもの」公式サイト
– 「第一回 たねびと映画祭」公式サイト
– 「よみがえりのレシピ」公式サイト
– 野口種苗研究所
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