日本のレタスの品種「オリンピア」が東京オリンピックを機に作られたことを話しましたが、今年のロンドンオリンピックまわりでも食にかかわる取り組みがあったようです。
10月2日朝に放送された、テレビ東京「モーニングサテライト」での「イギリスで広がる”食”の改善」という特集が分かりやすいので、その内容を紹介します。
茹で過ぎ、揚げ過ぎ、味がないとして「世界一まずい料理」とまで言われる、悪名高いイギリス料理。
番組の路上アンケートでロンドンっ子に聞いたところ、地元の人ですら「つまらない料理で重ったるいイメージ」との悪評価でした。
肩を持つわけではないのですが、こういうイギリス料理が出来上がった背景には歴史的な理由があるのです。
その内容がうまくWikipediaにまとめてあったので、概略を紹介すると、
昔イギリス貴族は日曜日に牛を一頭屠って平日の食事では残った肉をそのままか調理しなおして食べる習慣があり、
冷たい肉か火が通り過ぎた肉に各自好みの味付けをして食べる(つまり素では味がない)という伝統ができたこと、
加えて産業革命以降の労働者が新鮮な食材を入手するのが困難だったため、加熱殺菌のために煮過ぎ・揚げ過ぎの習慣ができたことなどが挙げられていました。
イギリス人の質素で合理的が気質が垣間見えるようです。
それはさておき、イギリス料理の悪評を受けて、食改善チャリティ団体「サステイン」は、
「オリンピック開催でロンドンにやってくる数百万の外国人にいかに世界に誇れる食事と文化の多様性を提供するか」という課題に取り組み始めました。
ロンドン五輪組織委員会も「イギリス産食材を極力使う計画を定め、より良い食事を提供」する方針を決めました。
そこで注目されたのが「キャピタル・グロース計画」です。
これは2008年に始まったもので、ロンドン市内にある5㎡以上の空き地を利用し、2012年末までに2012箇所の菜園を設置、
地産地消を可能にするような「農と食の転換」をはかろうというものです。
このプロジェクトには約6万人もの市民が参加し、道具や初期費用は行政の支援もありました。
つまり、その名の通り「官民一丸」となって、理想的な形で農と食の向上に取り組んだということです。感動的です!
このことは、身近で新鮮な食材が手に入りやすくなるという恩恵をロンドン市民にももたらし、
フィッシュ&チップスやローストビーフだけではない新鮮な食材を使ったメニューができるよう、
野菜がレストランに提供されて、より「美味しいイギリス料理」として生まれ変わっています。
このキャピタルグロース計画に、私が注目するキーワードが二つあります。「地産地消」と「都市農地」です。
今回ロンドンで実現した地産地消のメリットは
「新鮮で栄養価の損なわれない食材、旬でおいしい食材を選手に提供できる」
「ロンドン市民が一丸となってオリンピックに参加しているというイメージを作れる」
「環境に配慮しているというイメージを作れる」
という、オリンピックという祭典にぴったりくる素晴らしい3つのイメージが得られることです。
それを「都市農地=空き地」で行うことで、ロンドンの地域コミュニティを再生し活性化するという効果も得られます。
食の改善、コミュニティの活性化。これが都市農地の持つ大きな可能性のひとつです。
広大な農地を新たに確保できなくても、植物工場ではない野菜の生産ができる可能性もあります。
実は都市農地では周辺の住宅などに配慮するため、有機農業が取り入れられる例が増えているという点も見逃せません。
地域、都市、食の安心安全、有機、活性化。このすべてが実現できる可能性を、都市農地は持っているのです。
東京都では平成22年度から「都市農業経営パワーアップ事業」を開始しました。
農業で経営コンサルタントなどの専門家を活用し、都市農業の経営力をアップはかるというものです。
これも私が提唱し続けてきた概念のひとつです。
ロンドンの例を見習い、さらに経営の概念の導入という東京モデルを作ることで、
都市農地の可能性がさらに広がるだけでなく、私の活躍の場も広がりそうです。楽しみです!
追記:ロンドンではキャピタルグロース計画の一部として
「Capital Bee」というキャンペーンも行われています。
これも、無農薬の都市農地で蜂の自然受粉ができる、蜂にとって優しい街づくりプロジェクトです。
蜂の問題は今、ホットな話題のひとつです。これはまた別にご紹介できればいいと思っています。
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