先日「「物語を売る」ということ」「オリンピックにつながった、もうひとつの食の物語」という二本の記事で、「物語を売る」という私の仕事をご紹介したのですが、これは特に農産物マーケティングにおいて最近注目されている売り方でもあります。
しかし今回は、農産物ではない食品での「物語商品」の話です。
今までのような典型的なものではない、違う切り口からのものなので、ご紹介したいと思います。
高級志向の開拓で市場が拡大傾向のアイスと反対に、今プリン市場はどんどん冷え込んでいるそうです。
そういえば、一昔前の焼きプリンブーム以降、どんどん勢いがなくなっている肌感覚があります。
その現状を打破すべく雪印メグミルクが新たに打って出た手が「コミュニケーションプリン」。
商品名にシチュエーションを盛り込むことで、プリンをただのスイーツではなくコミュニケーションの手段にしようというものです。
すでに9月4日から発売されているものなので、知っている方もいると思いますが、
商品は
「(上司に渡してゴマすりたい)君のキャラメルプリン」
「(あの娘に渡して気を引きたい)君のイチゴミルクプリン」。
R25の人気4コママンガ「キメゾー」とのコラボレーションで、パッケージも遊び心満載です。
これは、商品の背後にある物語を売るという形ではなく、
商品に物語のトリガーを持たせて、消費者にプリンを食べる以上の体験をさせる、というタイプの売り方ですね。
つまり、体験を売るということです。
買ったことで周りの人との会話ができるなら、上司や彼女に渡すだけでなくてもいいわけです。
こういう「ウケ狙い」商品は今までにも色々と発売されてきましたが、問題は、リピートされるかどうか。
ネーミングやパッケージで上げ底してある分、より印象に残る味でなければダメでしょう。
スイーツ男子などで俄然注目を集め始めた20代~30代男性の発掘を狙うこの商品。見事ヒットとなるでしょうか?
実はこういうウケ狙いな物語商品というのは、農産物のほうがあっているのかも?とも思いました。
理由のひとつは、農産物でそういう商品はあまり売りだされないこと。
もうひとつは、ネーミングの遊び心と本格的な味というギャップのある体験を消費者に提供できる可能性が高いこと。
きちんと手をかけて作られた野菜の商品でこういう仕掛けをしたら、菓子市場でのしかけよりずっと効果的に働くかもしれません。
おふざけな印象がある分、求められる味は菓子の時よりずっと高くなるでしょうが、
その課題を超えられたら、今までの野菜の売り方に新風を吹きこむような、エポックメイキングな商品ができるかもしれません。
ダイレクトに「体験を売る」ということなら、もっとやりやすいですね。
体験農園や収穫体験など、すでにそういう売り方は今までもされてきているので、直売所で生産者さんの話を聞くなどさらに突っ込んだ形で「農業体験+野菜」を売るという案がいろいろと出てきそうです。
是非ともアグリキュレーターとして挑戦してみたい!
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