継続的に取り上げている「遺伝子組み換え」についての話です。
驚きの農産物の話を聞いてしまいました。
独立行政法人「農業生物資源研究所」が毎週木曜日の18時30分よりオープンカレッジを開催しているのですが、
私が受講している講座のなかで、「健康機能性農作物の開発」という意味深なタイトルの話があったのです。
これは、遺伝子組み換え技術を使って、
1)健康機能性を付与した作物(特定保健用食品)の開発
2)安価な医薬品の生産
3)植物を用いた新治療法(食べるワクチン)の創成
を行なっている研究成果についてのレポートだったのですが、
すでに1)に関しては、ビタミンAが強化された「ゴールデンライス」というお米の野外試験も行われているそうです。
その他にもビタミンE、リコペン、イソフラボン、ポリフェノールなど、
聞き慣れた健康機能成分を強化した作物育成の研究が進んでいます。
2)は「分子農業」という、遺伝子組み換え技術を使った機能性農産物、特に「食べる薬」と言われる産物の育成方法を使って、
血糖値に応じてインスリン分泌を促進できる糖尿病対策用の米や、
動物でしか生成できなかったDHA(ドコサヘキサエン酸)を生成できる植物の開発を行なっていて、
3)ではスギ花粉抗原を米の可食部に発現させた、花粉症対策用の米の開発が進んでいるという話でした。文字通り「食べるワクチン」です。
最近の花粉症治療で注目されているものに「減感作療法」がありますが、
これは長期に渡って少しずつ抗原を注射して新たな抗原を注射することで体内に別の抗体(抗原を受け止める物質)を作り、
アレルギーを起こす抗体と抗原の結合を妨げるというもので、
効果はありますが高額なのがネックになっています。
遺伝子組み換え技術で抗原を食品に組み込み、腸まで消化されずに到達できるようにし、
この秋にはスギ花粉症のニホンザルを対象に安全性や有効性の確認実験が行われるところまできています。
(食べ物の話ではないので余談なのですが、「究極の家畜」と呼ばれる遺伝子組み換えカイコの話もありました。
吐く糸の生体親和性が高く、それを使って作った人工血管は細くても詰まりにくい。
本当の血管に変わる人工血管を作ることができるカイコの開発話なのですが、
研究者たちは本気で「モスラ」を作りたがっていたり、「モンスターカイコ」と呼ばれる原因不明の奇形カイコが生まれているとか。怖い)
遺伝子組み換え技術の発達は、想像を超えるところまで来ています。
これからは、薬のかわりにお米を食べて病気を治療する時代が来るかもしれないということです。
しかし、本当に大丈夫なのでしょうか?
遺伝子組み換えの詳細というのは、細かくて膨大な情報で、もちろんここで紹介できるものではないです。
私もすべて把握できているわけではありません。
指摘される問題と、それに対する対応を理解するためには、相当勉強しなければならない。
これは、原発と同じようなことかもしれないと思います。
科学の粋を集めて綿密に計画された施設であり、あらゆる問題に対応できていると言われていました。
地球温暖化を防ぎながら、圧倒的な電力を発電することができる。
もし触れ込み通りならば、夢の技術です。
しかし、そこで何が起こったでしょうか?
地震と津波というシンプルかつ絶対的なマイナス要因が加わったとき、
科学の粋と言われた部分とは別の、すごくアナログな部分で、
あっという間に原発は破壊され、放射能を撒き散らす諸悪の根源となってしまいました。
同じようなことが、遺伝子組み換え食品で起らないとは言えません。
また、日本の研究者に特許戦略や技術戦略がないに等しいように見えることも気になります。
技術は作ることよりも、どのように使われるかのほうが大きな意味を持つものです。
作った技術を巨大多国籍企業に抑えられ、結局は彼らの独占を強める結果になるだけかもしれません。
遺伝子組み換え技術のメリットとデメリット、その両方を常に見ながら、「監視」を怠らないようにしないといけません。
大きな効用を持っているように見えるものだからこそ、そういう注意が必要だと思います。
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