この春に国立科学博物館で行われた「インカ帝国展」にちなみ、インカ帝国がなぜ1000万人もの人口に
食料を供給しつづけられたのかという謎について記事を書いたのをご記憶の方もおられるかもしれません。
その解答、ではないのですが、
インカで有名なマチュピチュ原産のトマトから生まれたトマトジュースが発売されたというニュースをご紹介します。
「天空のトマト」という、キッコーマン(デルモンテ)が発売した高級トマトジュース。
現在東京スカイツリーのみ、10月1日より数量8000本限定で販売されています。
このジュースの何が面白いかというと、「インカレッド」というデルモンテが20年もかけて開発したトマトで作られたという「物語」とともに売られているところです。
このインカレッド、今から20年前にデルモンテが”トマト野生種遺伝資源の解析プロジェクト”なるものに参加したときに発見した
野生種を、50代にわたって品種改良した結果できたものなのですが、
小粒な緑の姿からはトマトであることすら想像できないくらい、元はジュースとはかけ離れた種です。
そこから長い時間をかけて創り出した種を、今回満を持してトマトジュースとして発売し、
そしてなぜか11月末(予定)には引っ込めてしまう、という不思議なことになっています。
まだインカレッドの収穫数が少ないことが原因とのことで、来年以降、もっと安価なトマトジュースとして本格的に販売されるようです。
20年の歳月は、果たしてどんな成果となって結実するでしょうか?
ところでこのトマト、「時空を超えてやってきた夢のトマト」という宣伝文句が公式サイトに載っているのですが、
20年かかって作られたというだけでなく、そもそもトマトはアンデス高原(インカですね)原産で、
10世紀にアステカ、今のメキシコに伝来したもの。
コロンブスがアメリカ大陸を発見した時代にアステカからヨーロッパに持ち帰られ、
そこで食べ物としてさらに成長を遂げたという歴史があります。
メキシコに持ち込まれた時から数えただけでも、実に11世紀もの時空を旅してきたわけです。
毒があると言われたトマトを最初に食べたのはイタリア人なのですが、トマトを指す言葉である「ポモドーロ」は「金の林檎」という意味で、
完熟すると赤が金色味を帯びてくるトマトに驚愕したイタリア人がそう呼ぶようになったとのこと。
その驚きはオペラのタイトルにもなったぐらいなのですが、オペラ自体は上演するのに2日もかかる長大なもので、
過去に2度ぐらいしか上演されていないというトリビアもあります。
今回のこの天空のトマトが、どんな驚きを私たちの口に運んでくるか、その長い旅路を想像しながら飲むと、一層面白い体験になるかもしれません。
味はというと…大変おいしかった!どうおいしかったかは敢えてここでは言いません。
インカといえばじゃがいも、マテ茶など、最近注目を浴びることの多い言葉です。
あの荘厳なマチュピチュからやってきたインカ食材が特別おいしそうな感じがするのは、時空のマジックのせいでしょうか。
別にデルモンテの片棒を担ぎたいわけではないのですが、物語が商品を売るのにどんな効果を持つか感じていただきたくて、
この時空をめぐる旅を紹介したというわけです。
このジュースを知らなかった皆さん、天空のトマトを買いにスカイツリーまで足を運んでみたくなったでしょうか?
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