10月20日(土)より渋谷・ユーロスペースにて「よみがえりのレシピ」のロードショーが始まりました。
この映画は山形の庄内地方を舞台に、「在来種」と呼ばれる野菜を守り、
料理として新しくよみがえらせる様子を描いたドキュメンタリーです。
ここで扱われる在来種は、「藤沢カブ」「だだちゃ豆」「外内島キュウリ」「宝谷カブ」など、
地元でひっそりと守られてきた野菜ばかり。
なかにはたった一人しか作っている人がおらず、その人がリタイアすれば根絶やしになるというものもありました。
この映画は、山形大学准教授の江頭宏昌さんと、イタリア料理店「アル・ケッチァーノ」のオーナーシェフである奥田政行さん、
在来種それぞれの生産者の皆さんが主役で、
地産地消を目指し、個性の強い在来種を活かす料理を作って
都市に向けてアピールしていこうとする奥田さんと
学者の立場から、地元の在来種生産者に種の保護を訴えていた江頭さんが
生産者と結びつき、料理を通して野菜に再び光を当て、理想的な地域活性化を成し遂げる様子が描かれています。
奥田さんは今、地産地消の最先端を行く人として、メディアで注目を集めている人物です。
その著書「人と人をつなぐ料理」には、こんな印象的なことがかかれています。
「日本の素材を使った、日本人の遺伝子に訴えかける日本のイタリアンの味こそが地産地消」
「幸福論は土地によって違う。その土地の風土(幸福論)を翻訳して、人と人(生産者と消費者)をつなぐのが料理人の役目」
また、焼畑農業を研究していた山形大准教授の江頭さんは、こんなことを言っています。
「在来種は”つながり”を生み出す。人と人とのつながり、受け継がれてきた歴史のつながり、都市と農村のつながり」
「在来種は地域活性の核になる」
そしてこの映画が端的に描くものは、これからの地域活性において必要なのは、
在来種を「料理人」「知識人」「生産者」のネットワークで残していくことだ、と言っています。
在来集のまわりを研究していた江頭さんがいなければ、たった一人で種を守ってきた生産者が
農業をやめる気持ちを引き止めることができなかったし、
漬物屋さんやイタリア料理のシェフがいなければ、在来種に新たな光を当て、よみがえる道を作ることができなかった。
何より、かけがえのない種を守り続けてきた生産者がいるからこそ、在来種を使った地域活性をすることができた。
このトライアングルが、いかに大切なものか、映画を見ていると痛感します。
そして、「在来種を残すことは風を残すこと、風とは風土、風味、風格、風流という感性の共有」
という劇中に出てくる言葉の意味が、
淡々と描かれる映画によって浮き彫りにされていきます。
「よみがえりのレシピ」とはまさに、「在来種をよみがえらせるレシピ」であると同時に
「地域をよみがえらせる処方箋(レシピ)」でもあると思いました。
この映画を見て、風土を守り種を守り、野菜を受け継いでいくことの意味を、
皆さんに少しでも感じて欲しいと思っています。
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