こういう話をするのは久しぶりかな?今回はデザインの話です。
ひとつめは、「牛乳瓶のデザインの違いによって牛乳の味が変わる」という話。
金沢工業大学の感動デザイン工学研究所(顧客満足度向上につながる「感動」の評価システムを確立するための研究機関)と
明治の食品開発研究所による共同グループが発表したもので、
牛乳瓶の形の違いで、牛乳の香りが強くなることが数値的に実証できたとのこと。
牛乳そのものの味だけではなく、瓶の形から香りが変わることで、味を濃厚と感じたり、
唇にあたるときの表面温度も変化するので、心地良いひんやり感を感じたりするらしいです。
すごい目の付け所ですね。今まであまりこういう研究をした結果というのはなかったと思います。
今牛乳といえば、紙パックが主流。でも、紙ではこういう味の変化は起きないでしょう。
容器を「機能」という点から見なおした場合に、ただ牛乳を保持しておくためだけでなく、
美味しさという価値を付加するものとして見ると、
容器の選び方、作り方もおのずと変わってきます。
これは、瓶牛乳、それも口をつけて飲むあの懐かしの瓶牛乳が復活するきっかけになるかも?
牛乳瓶を、美味しさという観点からデザインしなおす。それが牛乳に新しい付加価値をつけるとしたら、素晴らしいですね。
もうひとつの話は「お箸」。
1989年から96年まで、味の素「ほんだし」のCMで流れていた、日本を代表するキャッチコピーを覚えてますか?
それは「お箸の国の人だもの」というコピーなのですが、
私はこの台詞を聞いた時、いたく感動したのを今でもよく覚えています。
お箸を使うという食文化が、日本人の行動様式に影響を与えるという意味だったのでしょうか?
聞いたときに、自分のアイデンティティがすっと把握できたような気がし、同時に
同じく箸を使う東アジアの国々へのシンパシーも同時に感じました。
しかし、日本の箸文化は他の「お箸の国」に比べると際立っています。
まず、何より日本の箸は作りが繊細です。皆さん、中華料理店などに行って、あの四角くて太さが変わらない箸に苦戦したことはありませんか?
日本のお箸は食べものをつまみやすいように繊細に作られているだけでなく、
用途や使う人に分けて、細かくデザインが分けられています。
特に、最近の流行として、従来の四角い箸だけではなく、多角形をしているもの、
持ちやすい形状に工夫されているものなど、
見た目や機能面のデザインで差別化を図った箸などが人気を得ていたりもします。
そういったブームを受けて、このところお箸の専門店に注目が集まっているのですが、
今回記事で紹介されている「銀座夏野」という専門店では、
「ラーメン箸」「納豆箸」「パスタ箸」「焼き魚箸」「豆腐箸」「そば箸」「うどん箸」などなど
料理に合わせてデザインされた様々な箸が売られているとのことです。
やはり、ある料理に最適化されたという「機能」という観点から、デザインの力でお箸に新しい付加価値を与えている例ですね。
そして、料理別の箸が持つ想像力が、使う人のコミュニケーションを喚起することで、
「物語を売る」機能も持つことになります。
これだけ箸文化が成熟していると、日本人こそ本流の「お箸の国の人」であると胸を張って言える気がします。
機能するデザイン。これからもそんな例を見つけたら、皆さんにご紹介していきますね。乞うご期待!
– 金沢工業大学ニュース「牛乳瓶で飲む美味しさ」を科学的に解明。
– 「パスタ箸」から「納豆箸」まで料理に合わせたお箸が見つかる店「銀座夏野」
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