農業生物資源研究所のオープンカレッジで聞いた、興味深い「イネ」の話を。
遺伝子組み換え作物には基本的に懐疑的な私ですが、
今回の話は食べものの遺伝子組み換えでありながら、ちょっと心が動いています。
全体のストーリーとしては、こんな話でした。
(1)世界人口の増加にともなう食料供給の必要性から、農業生産はこれまで以上に肥料に依存することになる。
(2)しかも、肥料として与えられる多くは窒素肥料である。
(3)窒素肥料の製造には、多くの埋蔵資源(化石燃料)を使う。その上、与えた肥料の半分は流出して環境汚染の要因になっている。
(4)マメ科の植物と共生してイネに窒素を供給する「根粒菌」というバクテリアがある。
(5)マメ科にしかないこの特質を遺伝子レベルで解析し、
同じ特質をイネにも持たせることができれば(3)の問題を解消できる。
この遺伝子組み換えが現在どこまで進んでいるかという研究内容の紹介がありました。
現時点では、どうすればイネに根粒をつくれるかということがやっと見えてきたレベルのようです。
出来上がるのは10年後ぐらいだという話でした。
といってもこれは、イネに根粒を作るところまでの話で、
ここから根粒菌を根付かせ、イネに窒素を供給できるようにしていくという
まことに先の長い話のようですが…。
これ、全てマメの遺伝子をイネに組み込むことで実現する研究です。
確かにこの遺伝子組み換えには大きな利点があると思います。
あのビル・ゲイツ財団がこの分野に莫大な資金を供給しているという話もあり、
実現までの期間が短縮する可能性もあるようです。
いいことではありますけど、その後この技術が巨大バイオテクノロジー企業に独占されるようなことがあると、
別の意味で食料安保の問題になると思います。
日本にとっては、著しい国益の喪失になりますし、
食料供給の問題の利権問題が一層深刻化するのは目に見えています。
いつも思いますが、技術の研究だけでなく、技術知財戦略にも知恵を凝らしてほしいと思います。
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