先日、シニア世代へのマーケティングについての記事を書いたところですが、「成熟飽和・高齢化社会におけるマーケティングのあり方」という興味深い講演を聴きました。
埼玉県農商工連携フェアの会場、さいたまスーパーアリーナの特設会場での講演です。
お話をされたのは、女子栄養大学の高城孝助教授。専門はフードマーケティングで、
海外を含む民間企業での営業・マーケティング部門での経験が長いとのこと。
理論より実践に裏付けられたお話は非常に面白かったです。
そもそも女子栄養大学というところは、計量カップや計量スプーンを考案し、
日本に初めて「レシピ」というものを導入したた香川綾さんが創始者。
そういうユニークな校風が、教授お人柄にも現れているのかもしれません。
その講演の内容は、最近のサービス業全般の言葉遣いが高齢者にとっては変になってきているという話。
よく最近「バイト敬語」なんて言われ方をしている言葉遣いが多分に含まれています。
これらの言葉が、教授ご本人も含む高齢者層、つまり、今後最大マーケットとなるはずの層にとって
違和感を与え、顧客の満足につながらないというもの。
教授が例に挙げていたのはこんな言葉です。
「ご注文の品、以上でよろしいでしょうか?」
「ご注文の品、こちらでよろしかったでしょうか?
」
「ご注文の品、以上でお揃いでしょうか?」
「おタバコの方、お吸いになられますか?」
「千円からでよろしいでしょうか?」
「千円からお預かりします」
「お名前いただけますか?」
教授はこういう言葉遣いを「意味不明の言葉」だといって「ゾンビ語」と呼んでいました。
確かに違和感を感じます。ということは私も高齢者層…?かどうかはさておき、
面白かったのは、教授の対応の話。
「1000円お預かりします」と言われたら「明日も来るからそれまで預かっておいて」と言い、
「ご注文の品は以上でお揃いでしょうか?」と聞かれたら「全てを持ってきたという自信がないのですか?」と聞き返すのだそうです。
私の印象だと、教授は、こういう独特の言い回しであれこれと矢継ぎ早に確認するよりも、
「ありがとうございました」「かしこまりました」というようなことを言うべきときにきちんと言って、
顧客に答えを求めずに一歩引いた振る舞いをするというような「心遣い」を求めている気がしました。
若いアルバイトの店員が相手であれば、ちょっとかわいそうな気もしますが…でも、
こういう細かいところから気を配っていくことは、高齢者層が一番求めていることかもしれません。
特に食品業界では、高齢者層はターゲットとしてまだまだ未開拓、未知の分野であるところが多いです。
前に私が紹介したのはインスタント麺などの話でしたが、
その時には、高齢者層のニーズはインスタント食品より惣菜に向いているのではと書きました。
この外食産業での言葉遣いと惣菜の話、ちょっと共通点がありますね。
「小手先のサービスより、本物の気遣い」とでも言えばいいでしょうか。
今後の高齢化社会に向けて、新たなマーケット開拓のヒントになるのではないでしょうか?
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