去る2月11日、埼玉県の小川町有機農業推進協議会主催の種採り講演会で行われた、野口勲氏の話を聞いて来ました。
野口勲氏は、在来種のエキスパートとして知られる野口種苗の社長です。
3時間ぶっ通しの熱演。私のその熱い気をたっぷりいただいて帰ってきました。
ポイントは、最近市中に出回っている野菜に「雄性不稔種で作られたF1種」からできた野菜が
どんどん増えているということです。
しかし話はひとつひとつの細胞の構成要素であるミトコンドリアの話から始まり、
この話、種とどう関係あるんだろう?と思っていたら、
雄性不稔種がミトコンドリア異常を持っているというところで繋がりました。
現在市場に出回っている野菜はほぼ全て、F1種からできた野菜です。
F1種とは、何度か紹介してきましたが、1代交雑種(交配で作られた1代目の種)のことで、
1代目だけを見るなら、粒ぞろいで市場に適した野菜を採ることができます。
この種を作るためには、交雑種ですから、異種を掛けあわせなくてはならいので、自家受粉されては困る。
なので雄しべを人の手で取ること(除雄)が必要なのですが、ここで役立つのが雄性不稔種です。
雄しべがない突然変異体で、この雄性不稔種を普通の品種の隣に植えておくと、
多大な労力を必要とする除雄をせずに、簡単に1代雑種を作ることができるのです。
で、野口氏の話はこの雄性不稔種が男性不妊の原因になっているというもの。
雄性不稔種の突然変移は、ミトコンドリア異常によって生まれてくるそうで、
言ってみればこういう野菜は「男性不妊野菜」なわけで、人間の男性不妊もその影響なのかもしれない。
野菜の異常が人間に引き継がれるというこの話は、推測の域を出ないものです。しかし、
平成18年に筑波大の研究によって、ミトコンドリア変異が精子の減少や運動量の低下を招き、
それが人間の男性不妊を引き起こしていることはすでに明らかにされています。
不妊野菜が男性不妊を引き起こす。あながち的はずれな推測ではないと思います。
先日、給食改革によって、荒れた学校を立ち直らせたという本を書いた大塚貢氏のことを紹介しましたが、
この方の話のなかでも、若者の精子奇形の増加が指摘されていました。
氏は滋養の低い野菜や、食品添加物、残留農薬が問題なのではないかと言っていましたが、
いずれにしても、我々が普段食べているものが、
経済性の追求や科学の発達により、細胞レベル、分子レベルで有害なものになってきている危険性には
留意しておく必要があると思います。
ところで、東京の皆さんにお知らせです。
池袋のジュンク堂7Fにて、野口種苗の固定種(在来種)の種が買えます。
2月11日から3月10日まで行われている「意外と知らない種のこと~「固定種」ってなに?」
という企画展で入手可能です。
私も買いました。レジにできた長蛇の列に種を持って並んでいたのは私だけでしたが…。
興味のある方は是非行ってみてください。
最終日は16時までです。
– 金融ファクシミリ通信TOPインタビュー「農業も原発と同様な巨大リスク内包」野口のタネ/野口種苗研究所代表 野口勲氏
– 科学技術振興機構「ミトコンドリアゲノム変異が男性不妊の原因に」(男性不妊の効果的な治療法や新薬開発に期待)
RSS feed for comments on this post. / TrackBack URI