しばらく前に、中国本土のマクドナルドとKFCで薬剤を過剰投与した鶏肉の使用が判明したニュースをご存知でしょうか。
養鶏場の鶏に抗生物質や成長ホルモンを過剰投与したものが使われていることが分かり、
日本マクドナルドやKFC、吉野家などに鶏肉加工品を輸出している企業でもやはり薬剤過剰投与の鶏肉を加工している事実が判明。
疑惑の的となった日本マクドナルドに輸入元を尋ねた結果、はっきりとした回答が返ってこないばかりか、
「心配なら購入を控えて」との答えだったため、ネットを中心に大騒ぎとなりました。
そしてついに、KFCが2月25日に中国の養鶏農家1000件以上との契約を打ち切ったことを発表しました。
事件を受けてKFCの中国市場での売上が、予想を超えた減少を見せたためです。
事実が報道されてから対応に乗り出すまでに数ヶ月を要したことは残念ですが、
マクドナルドの上記の対応はさらひどい。同じく疑惑の的であった吉野家も、
「嫌ならば食べなければいい」という種の発言をして、反感を買いました。
しかし一番不思議なのは、メディアの反応です。
このニュース、テレビなどの大手メディアではほとんど取り上げられていません。何故なんでしょうか?
ヨーロッパは今、牛肉商品に馬肉が混入していることが分かって大きな問題となっています。
この話題、先週、国連大学で聞いた「未来につなぐ種、土、食」という講演で、インドの環境学者バンダナ・シバさんという女性が事例として話していました。
シバさんは、「グローバル・サプライ・システムからローカル・ダイバーシティ・システムへと変わるべき」と言います。
同じような商品を世界で流通させるのではなく、それぞれの土地で多様性を持った商品供給のシステムを、という話なのですが、
ヨーロッパの馬肉混入や中国の薬物汚染鶏のように、消費者の目に見える範囲を超えて流通するようになると、
生産や流通の過程で何が起きているか分からなくなってしまうのです。
2月26日朝のNHK-BS「ワールドWaveモーニング」によると、
イギリスで馬肉入りラザニアが販売されていた件では、発注の時点で情報がEU内の複数の国を経由しており、
さらに肉そのものの流通も生産、加工、流通、中継で21カ国も経由していたという報告がありました。
作業が細分化され、それぞれが最も安いところで行われた結果のようです。
しかし、これらは全て安い製品に関して起きていたようで、比較されていた高級牛肉の場合は、
生産、加工、販売まで自社で行い、トレーサビリティーもきちんと出来る仕組みを持っているのです。
まさにシバさんの言うとおり、自社(ローカル)で多様(ダイバーシティー)な工程を処理(システム)していたということです。
食の安全を担保するためには、目に見える範囲内のものを食べること。これは有機農法で有名な金子美登さんもよく言う言葉です。
見えなくなると、独占的多国籍企業に食品をコントロールされても気が付かない。これでは食の安全を守りようがない。
地域活性のためにもとても重要な「地域の多様性」については、私もいろんな形で情報発信をしてきました。
世界中を同じ商品で埋め尽くすために、生産に無理を生じさせるのではなく、多様な地域で、その地にあったものを作ること。
これが、今からの私達の食と生活を安全にするための唯一の道、と、乱暴と知りつつ私は言い切ってしまいます。
今回の食肉に関する問題は、世論が「ローカル・ダイバーシティ・システム」について関心を向ける契機となるでしょうか?
いや、もうそろそろ、私たちは真剣にそういうことを考えなくてはならない時に来ていると思います。
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